初版本・極美本『人間の運命 芹沢光治良』 新潮文庫全7巻揃い

芹沢光治良は、『人間の運命』を書くに当たって一切の注文原稿を断わり、日本では異例の書き下ろしによる出版を選びました。


いわば「生涯の作品」を企図していたのです。1962年に新潮社から第1巻を出版。刊行と同時に大ベストセラーとなり、芸術選奨文部大臣賞・日本芸術院賞を受賞。


『人間の運命』とは・・・
『人間の運命』は、明治時代の終わりごろから昭和26（1951）年までの約50年間の膨大な時間の中で、歴史的事実を背景にして、主人公・森次郎を始め、様々な人物が登場し、貧困、教育、友情、愛、結婚、家族、生と死、出会いと別れ、信仰、戦争、再会といった人生における根本的な問題が描かれた、芹沢光治良の自伝的長編小説である。



〇先日亡くなった大江健三郎は、「一貫したモラリスト」と評しました。

＞「良識を体現する作家、ということが実際にありうるなら、芹沢氏はまさにそういう人だった。ところが氏の作品には、当の良識から恐しいほどはみだしてしまう人間の心理、生き方への強い関心もあった。良識の人と、なにか病的に異様な人との間で、危険なバランスをとることが、芹沢氏の小説の書き方だった。」



〇大岡　信（詩人）は、「希望のうちに生きる能力」と評しました。

＞「芹沢さんの文学に射しこんでいる本質的に明かるい光は、私たち一人一人に本来与えられているところの、現実世界とぴったり重ね合わせになっている高次の精神世界を感じとる能力を、この作家が片時も曇らすことなく持ちつづけたことの、こよなき証しなのだというほかないだろう。」

平成5（1993）年3月23日、東京都中野区東中野の自宅において逝去。享年96歳。


次女が、音大受験のおり、芹沢光治良氏の三女芹沢文子氏に短期間師事したことがありました。


娘は、その清冽な美しさに感動していました。嬉しいことに綺麗な文字で励ましのお手紙をくださいました。もしや？と思い…調べてみますと、やはり芹沢光治良の小説に登場するピアノ・声楽に精進しておられる「文子」さんでした。


間もなく渡伊する娘が、コチラを購入しましたが、結局、自宅に置いていきました。その後、ミラノの古書店にて全7巻を購入したとのこと。


つまり、新品同様です。状態はキレイです。